1年間のドイツ駐在が終了した。この文章はまだドイツで書いているけど。いろいろあったがとても穏やかな気持ちだ。穏やかすぎてヤバい。
TL;DR
- ドイツは地球にある
- 駐在行くなら(金銭的に)若いうちに行っとくと吉
- ドイツ人はこわくない
- 英語は気持ち
ドイツは地球にあった
ドイツは国であり、地球上に存在していた。ビールが安くて、タバコの吸い殻はポイ捨てされ放題だし、車は右側通行だった。あと、ドイツ人は人間だった。大柄で声量がデカくて結構優しいんだけどメールがキツな人間が多めの国だった。あとマナーモードという概念はあまり無いらしかった。あなたは電車内でBluetoothスピーカーを使っても良いし、使わなくても良い。
日本以外の国にいちど住んでみるのは選択肢としてアリだとおもう。ワーホリで来る場合は色々めんどくさそうだけど。 幸せになるためではなく強くなるため、と仰られていた方がいらっしゃったがたいへん同意できる。あと駐在の場合はめんどくさい手続き系を会社がよしなにやってくれるのでたいへん楽である。(熱い手のひら返し:強くなるためじゃなかったのか?) とはいえ現地採用と駐在では得られる経験の方向性が全然違うので一概にどっちが良いとは言えない。
海外駐在についてシェアしておきたいこと
金
身も蓋も無いトピックだがこれは公共の知見としていちおう書いておきたい。 結論から言うとこっちにいる間は給与が増えた。 自分の場合は
- 手取り1.5倍.
- 家賃全額補助.
- 中古車をキャッシュで買えるぐらいの赴任手当(ドイツの中古車はあんまり値下がりしない).
という感じだった。いろいろ聞いていると昔の方が羽振りは良かったらしい。不景気はカス。
ちなみに財力のある総合商社とかだと
- 手取り2倍(日本円と現地通貨両建て).
- なんかやたらすごい家.
- 運転手付きの高級車.
しかも元々の給与が高いのでびっくりするぐらい給料が増えるらしい。こわい。
駐在するなら早いほうがいい
あと、海外駐在をするならなるべく若いほうがいいということがわかった。 これは己の社会人としての意識が高まったとか、慶應大学に入学したとかではなく、単純に以下のような理由からだ。
家と車を処分しなければならないリスク
自分の場合は家も車も別に持ってなかったが、持っている人は赴任の際に処分してから来るらしい。維持費がバカにならないので。するとどうだろう。お得感がない。かなしい。
家族が精神的に病むリスク
自分よりも家族のほうが精神的に病むというのは案外あるらしい。
メシが合わないリスク
これはもうなんか人次第・国次第だとおもう。個人的にはドイツのメシはけっこう好きではあるんだけど、いかんせん胃にクる食事が多いのでだんだんしんどくなってくる。同じドイツでもデュッセルドルフとかだったら日本食の選択肢が多いのでその辺に赴任してたらまた違う感想になったかも。
無駄にえらいおっさんが無駄に出張に来るリスク
無駄にえらいおっさんはなぜか出張に来たがる。意味もなく。無駄にえらいおっさんが来るとどうなるか皆さんはご存じだろうか。現地のわりとえらい日本人が出張の様々なケアをすることになる。ディナーには確実に出席させられるらしい。しかもディナー中に仕事の話とかしてくるらしい。すごい。帰ってほしい。本人が出世したけりゃいいチャンスなのかもしれないけど。
資産運用ができない
厳密に言えばできないこともないが、日本の証券会社は基本的に海外居住者の株式売買を認めていない。もしかしたら単なる体裁だけでやってても何も言われない可能性もあるけど。あと時差もあるのでめんどくさいことこの上ない。もともとの資産が少なければあまり気にすることはない。
そんなわけで
若いうちのほうがお得感が出るということである。なんだかんだで自分自身の心身が疲弊するリスクはあるのでリターンは最大化できるに越したことはない。
駐在の感想
時間制限アリで常にリモートワークしてる感じ。日本と電話できるのは朝8:00-12:00ぐらいが限度。ITインフラ・IT投資に関しては悲しいかな現地子会社のほうが先進的だった。まーこれはかいしゃによりますね(棒)
ドイツ人について
- 別に勤勉ではない.
- 単純に話をするのが好きっぽい.
- 声量がバリクソでかい
- いがいとやさしい
- コミュニケーションがめちゃくちゃローコンテクスト
ローコンテクストというのは表現がダイレクトとかそういう意味で、表現が高度になるほどハイコンテクストになる。日本語は最もハイコンテクストらしい。 で、ドイツ人はめちゃくちゃローコンテクストな人種らしく、「今週中にお前がレポートを送らなければ、このプロジェクトは失敗に終わるだろう」みたいなメールを平気で送りつけてくる。これは悪気があってやっているわけではなく、事実を淡々と述べることを善とする社会的な風潮があるらしい。日本人から送られて来るメールで「たいへんお手数ですが今週中にご対応いただければ幸いです」みたいな文面はドイツ人からすると、「おっそうだな、これは無理して今週中に送らなくてもいいな」という判定になる。ちなみにイタリア人もかなりハイコンテクストなコミュニケーションを好むらしく、どちらかといえば日本人はイタリア人とコミュニケーションを取りやすいのかもしれない。
ドイツという国は「相手が何を考えているか、勝手に想像することは危険」「何かを要求する場合は、自ら主張する必要がある」という価値観を持っているらしい。これはWWIIから学んだ教訓らしく、どうやらWWII以前は「察する」という概念が一般的であったらしい。(ってドイツ人が言ってた)
ちなみに、子供が中学校に上がると、最初の試験で教師からほぼ全員が根拠のない赤点をつけられる。で、その後に「不当な扱いを受けたと感じたら、あなたにはそれを主張する権利と責任がある。もし今回の試験のように、自分が不当に扱われたと感じたなら、それを主張しなさい」と教えられるらしい。(これもドイツ人が言ってた)
英語について
これはもうこのエントリ読むだけで十分な気はする。だいたい同じ感想で、技術系の仕事だけでいうと流暢に英語が喋れること自体にあんまり意味はない。意思疎通をする意志そのものが非常に大切。営業とかだったら知らん。
日本語とそれ以外の言語の構造に起因してはいると思うけど、英語は喋れるのに英語で会話ができないみたいな日本人が多かった。 日本語と比べると語彙が格段に減るのはしょうがないとしても、意味のない文章を大量に投入することで煙に巻くみたいなコミュニケーションしてた人だと説得力の無さが残酷なぐらい可視化されてしまう。 「AなのでBです」って言えばいいところを「AでBがCだけどDもEでFかもしれないのでたぶんZ」みたいなかんじ。
なので母国語のコミュニケーションスキルをあげたほうが早い。日本語が不自由なまま英語だけ喋れてもあんま意味ない。というか、英語が喋れるというだけで意味もなくミーティングに首突っ込んでくる(あるいは突っ込まされる)の本当に迷惑だからやめてほしい。
おわりに
とりあえず日本帰ったらラーメンたべる。